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コラム4【ロッキーと野生の呼び覚まし(回想録)】


【ロッキーと野生の呼び覚まし(回想録)】

人間が育てたニホンカモシカを果たして自然に帰せるのでしょうか? 

そんなことを悩みながら2年間ロッキーと付き合ってきました。いろいろ本を読みあさり、専門家のアドバイスを頂き、手探りながら、ようやくロッキーは独り立ちしてくれた…であろうと思うのです。(今ごろ何をしているものやら、消息を知るすべはない)

 試行錯誤の子育ては、振返ってみると、なんということはない、人の子を育てるのと何も変わりませんでした。親に対する依存心を厳しく断つような子別れが必要だとばかり、思っていたのですが、とうとう最後までそれは必要がなかったようです。とにかくロッキーとは、努めて山に足を運び、私は何が起きてもよいように、いつもそばにいてやるだけです。毎日が発見、山に入ると彼の好奇心をくすぐるものばかりです。

 そのうち、だんだん独り遊びが面白くなり、ダダをこねて帰りたがらないことや、突然帰って来なかったこともありました。しかし、カモシカも人間も思春期は同じ、口うるさく言う親の側など楽しくも何ともない。独り遊びへの好奇心が親への依存心を超えたとき、彼は喜びいさんで深い森へと飛び込んで行ったのです。

『便りがないのは元気な印…』行ったら行ったで、手紙や電話の一本も無いなんていうのは、人の親でも思い当たる方が少なくはないはず。その後、ロッキーのお騒がせは今のところ起きてはいません。野生動物は人間の手で育つと自然には戻れない…。常識とされていることですが、私は奇跡としか言いようの無い体験をしてしまったようです。

不思議な体験が巷で話題になってしまい、まだその興奮冷めやらぬ中、また新たな挑戦が待ち受けていました。

三月の上旬、県北のある町で、子犬の赤ちゃんが道端で拾われました。ペットショップで、犬種を確かめてもらったところ、なんとそれは犬ではなく、キツネの子どもだったのです。

せっかく可愛がろうと思っていたのでしょうけど、野生動物は飼うことはできません。すでに親元へ帰すことが困難と判断した県の地方振興事務所では、私のところに保護飼育の依頼をしてきたのです。

きつねのクンクン 預かった私も驚き! またしても赤ん坊かあ…。それに私はキツネなど育てたことがない。抱っこしながら

「さあ、これからお前とどうして行けばいいのかなあ?」言葉は無理としても、意思はどうやって伝えようか?

きつねのクンクン


目を閉じながら子ギツネと親子になりきるイメージを描いていました。これはロッキー以来、困り果てると常にやってきたことです。魔法使いでも呪い師でもないので、子ギツネの言葉が通じるわけではありません。でも、下手な失敗は避けられるような気がするのです。

この子の名前はクンクン。鼻にかかった甘えた声を真似ているうち、それが名前になってしまいました。

我が家の愛犬ボビー(パグ)が少しばかりお兄ちゃん。クンクンに野原を駆け回る楽しさを教えてあげています。兄弟が多い動物は擬似的にでも仲間がいることで、なにか精神面の成長に欠かせない要素があるはず。しかし、ニャンコのように餌のネズミを捕って見せてはくれない。

きつねのクンクン

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