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コラム3【人という字、互いに寄り添って、人が成り立つ・・・】


【人という字、互いに寄り添って、人が成り立つ・・・】

 尖った生き方をしている時に“ガツン”と言い聞かされた先輩の一言。

驕りを戒める昔の人の味わい深い教訓だった。

わかりきったことだが二本の棒切れを立て掛けてみると、いかに巧く立てかけても、決して立つことはない。この教訓には、言葉に表れていない、なにか大切なふくみを感じてしまう。

 また一方『人』という字は象形文字でもあり、足を開いて立つ人の姿を表したとされる。

 地上のどんな生物も真似が出来なかった直立二足歩行。人類の進化は曲芸に近い行動を可能にした。歩くことから解放された前足はやがて、手へと進化することで、五本の指をばらばらに機能させることができるようになる。このことがさらに脳を進化させた。

 お猿も頑張ったのだろうが努力が及ばなかったらしい。彼らの手はまだ足の役割からすっかり解放されてはいなかったようだ。上半身が前のめりに傾斜していると、脳の発達でバランスを失い、首に負担がかかるようになる。体に悪いことはすぐに淘汰される。(猿にとって脳の発達が健康には良くなかったらしい…。)

 知能が高度に発達するに従い、人間は不可能をひとつひとつ消していく。やがて、その生存を脅かすものの全てを組敷いたつもりになり、自然の仕組みの中で持ちつ持たれつの生き方をしていたことをすっかり忘れてしまったのではなかろうか?

 農民の話。
昔から、畑にスギナを生やしていたら、あいつは怠け者と後ろ指を差されたという。
畑からは収穫するだけでなく、肥料を補い、雑草を抜き、たえず土を反して作物が育つのに最適な状態にしておかなければならない。気を抜いたり、手を抜いたり…ちょっと油断した途端にこのスギナが生えてくる。 スギナの歴史は以外に古く、恐竜の時代、既にスギナの仲間は存在したらしい。

 この時代まだ土質が安定しておらず、現代の我々が目にする様な、高等な植物は育つことが出来なかったと思われる。肥料っ気がなく、酸性に偏った土質はスギナにとっては、とても都合のよいものだったのかも知れない。

 現代のスギナ、地上部は大きく育ってもせいぜい二十〜三十p。その根はと、掘ってみると、長い地下茎で、どこまでも、どこまでも繋がっている。地下茎と根っこで集めた養分を葉に蓄えるだけ蓄えるが、秋になり、毎年枯れ落ちる度、蓄えた養分をみなその根元の土に戻してしまう。これを何年か繰り返すと、不思議なことに、スギナにとってはあまり居心地の良くない土壌になって行く(痩せた土地にしか生えない宿命?)。徐々にその辺りにはスギナとは違う植物が生え始める。

スギナのおかげで、いつのまにか貧しい土が、養分に富んだ、多くの植物が生育するのに適した土に変わっていく。やがて、スギナは高等植物にその居場所を追われ、姿を消してしまう。

 自然の森では土中の養分は循環しながらたくさんの生き物達を育んでいる。養分は吸い上げられても、落ち葉や、動物、昆虫の糞や死骸として再び土に帰る。また植物は、自らが枯れるとき、集めた養分を表土に遺産として残してゆくのである。

 自然界での人間の役割を考えた時、何故か疑問のまま、未だ答えを得ていない。 知り得る限りでは人間が自然からの搾取を長い間続けてきただけで、最近では何をか返す姿をあまり見なくなったような気がする。

それは人間の特権なのだろうか?

 後になってから代価を求められるようなことは、ないのだろうか? スギナのように姿を消してしまうのも困るのだが、なくてはならない役目のようなものを忘れているのではなかろうかと思うことがある。

 ほぼ半世紀生きてみて、この五十年間、おそらく失ってしまった自然の数は人類の歴史上最悪。自然の中では不要になったもの達は淘汰されてゆくはず。自然の中で、役に立たない人間が安穏に暮らしていける理由は何故か見えない。

 『人』の字の話に戻るが、二本の棒の長さは同じではない。長い棒が短い棒に支えられている。ふんぞり返っている長い棒が一見偉そうに見えるが、短い棒の支えを失うと倒れてしまう。支えられていると考えるのは悔しいことかも知れないが、万物の長として偉ぶってみたところで、支えなくしては、その立場を保つことも出来ない。支えている棒が脆くなり始めていても、倒れるまで気づかずにいるのだろうか? 

 野生動物と触れ合っている毎日の中で、自分達が今、何をやらなくてはいけないのか?
 感じ取る作業を始めたばかり、手段は野生動物との接点だけ…。しかし、耳を澄ますと、自然の悲鳴がたくさん聞こえてくる。

自然淘汰の束縛から自力で解放されたかに見えた人間。神以外、制するものがいないと思われていたが、どうも自らが天敵だったのかも知れない。

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