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コラム1【命を守る文化を育てる】


【命を守る文化を育てる】

 山や里で、美しいさえずりを聞かせてくれる野鳥達、春から夏にかけて、子育てに大忙しです。自分達がふだん食べている量ではとても足りません。
 面白いことに、草木の実を餌にしている野鳥までもが、この時期には、雛鳥のために昆虫を獲る鳥がいます。早く成長させるのには植物性のものより、昆虫の方が、栄養価が高いのかも知れません。

 一年間に、たった一羽で樹木を喰い荒らす害虫を十五万から二十万匹程獲るものもいるそうです。この数は樹木何本守ったことに相当するのでしょう?


 近年では地球温暖化現象などから、樹木の大切さについて真剣に考えられるようになりました。
 森を守るのは、小鳥だけに限ったことではなく、多くの生き物達が森の恵みを頂きながら、また何かの形で返していく…。お互いが助け合い、そこに棲むこと自体が森を守ることに繋がっています。人間もまたその恩恵の下に生きています。
 都会に住んでいる人々も、一見森には縁が無いように見えますが、美味しい水や新鮮な空気は、都会の機能では作り出すことはできません。

 たくさんの生き物達が網の目のように手を結び、森全体をひとつの生命維持装置として機能させていく…。この素晴らしい仕組みは、人間がどんなに真似をしようとしても、敵うものではないようです。

 時代が進むにつれ、人間の快適生活の影で、人知れず傷つき、あるものは命を失い…、自然界の摂理とは全く関係のないところで、野生動物達が犠牲になっています。

 人間達による犠牲なら、誰かがその犠牲から解いてあげなければいけないのではないかと思います。人間がしたい放題でも、自然が優しく受け入れてくれた時代は過去のことです。そうでなくても数多くの貴重なものを既になくしてしまいました。

 人間の長い歴史の中では野生動物を食糧と考えたこともありながら、同時に哀れむ優しさも育んできました。

 意識の上で、動物は目の前の餌にしか関心を持ちません。
 傷ついた兎を狼が助けた話など聞いたことはないと思います。何故人間だけが、傷ついた動物を助けてあげたいと思うのでしょう?実はこれはとても大切なことで、保護活動への関心を集める、大きなきっかけになりました。こういうことでもないと、自然界にできたほころびに気づくことさえできません。

 これは人間の大切な役目を思い起こさせるシグナルなのではないでしょうか? それが繕えるのは人間しかいないからなのです。

 自然界には何ひとつ、無駄な命はありません。人間によって傷ついた動物達を癒し、元気になったらまた自然の中に戻してやる…。ひとつひとつの命を個々のものとせず、我々みんなの生命維持装と考えた時、我々が今何をしなければいけないのか? それが見えてくるはずです。

 『命を尊び、命を守る』 

 万物の長、人間に与えられた大切な役割…これはまた、人間唯一の文化でもあると思います。そして、それを大切に子ども達に伝えてゆくことも私達の使命なのではないのでしょうか…。 

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